屁組曲

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その時、男は何をしていいのか、何を考えればいいのかさえわからなかった。今まで自分は正しいと思っていた。信じて疑わなかった。周りのことなど考えもしなかった。自分が成功すればそれでいいと思っていた。考えられることはなんでもやった。強引なこともした。相手がどうなろうと知ったことではなかった。後で文句を言ってくるものもいたが相手にしなかった。裁判所の常連にもなっていた。そんな自分についてくる者も少なくなかった。それがまた自分への過信を加速させていた。

 しかし、すべてをなくしてしまった。富も名声も権力も仲間もすべて失った。いや、最初から持っていなかったのかもしれない。自分はただ踊っていただけだった。いや、踊らされていただけだった。自分の欲望に。もがいていただけだったのかもしれない。欲望から逃れようとして。すべてを失って、欲望もなくなっていた。なにも考えられなかった。

 やさしい音色が聞こえてきた。周りを見渡すと全裸の人が一人。音色は胸に沁み、心に沁みた。男の体は熱くなり。目から涙があふれ出た。なにもかも抑えられなくなっていた。声を出して泣き、体は感情によじれた。泣きに泣いて、いつの間にか寝ていた。

 起きるとサッパリしていた。「またやり直しだな」とつぶやいた。








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